体にとっての病3

錐体外路系運動

人間が生きているということは、殆ど意識しない動きによって行われているのです。目にゴミが入ったと慌てているうちに涙が出てきてゴミを押し流してくれる。鼻にゴミが入ると鼻汁が多くなったりクシャミが出たりして出してしまう。というように、人間の体の中にある健康を保とうとする働きは、頭で知っていないのに、自然にやっていくのです。意識してやる運動でなくて、意識しない運動で行われている。

我々の普段の運動は、意識して行う錐体路(すいたいろ)の運動と、錐体外路系の働きで無意識に動いてしまう運動との重なりです。ちょうど受胎すると同時に体がお乳の用意をするような、意識しない運動はたくさんにある。整体とはどういうことを言うのかというと、外路系運動が敏感にキチンと行われるような体をいうのです。風邪を引かないことでもなく、下痢をしないことでもなく、異常があればすぐにそれを感じ、感じると同時にその異常を調節する働きが起こるような、刺戟(しげき)に敏感に反応する体を整体というのです。異常があっても感じない、実際に毀れているのに感じない、毀れているのにその徴候も出ていないというような鈍い体は整体とはいえない。

病気もすべて外路系運動の働きでするのだから、生きている証拠であり、生きようとする要求の現れなのです。そうですね、死んだ人は熱も出さなければ苦しみもしない。だから我々が生きているということを、どういう角度で自覚するか、生きている働き、その現れとしての体の異常をどう自覚するかという事に、、問題は帰ってゆくと思うのです。

月刊全生 第七三〇号

豊島区巣鴨の『永井整体院』